次世代インターネット技術を使った救急活動支援画像配信システム第5回公開実証実験のお知らせ─ 3D画像等の伝送を可能にしたMobile ER (モバイル救急救命室) ─

2011/02/03

【要旨】
奈良先端科学技術大学院大学と慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、生駒市消防本部は、世界に先 駆け救急活動を支援するために現場の動画像などがやりとりできる画像配信システムの共同研究開発を2003年から進めてきました。今回は、救命にあたる医 師が手持ちのパソコンや携帯電話の画面で患者の傷病情報を画像などで確認できるシステムを開発、公開実験します。
共同研究グループは2005年 10月より4度に渡ってプロトタイプシステム(Mobile ER - モバイル救急救命室)の公開実証実験を行い、次世代インターネット技術を用いた救急車通信システムとして世界初の試みの様子を披露しました。我々はワイヤ レスブロードバンド時代をにらみ、この共同研究においてさらに開発を進め、より進んだ救急活動支援画像配信システムを完成させました。
今回のシス テムでは、広帯域ワイヤレスブロードバンドであるWiMAXを用い複数の動画像ストリームを扱うことでより柔軟な画像情報を伝送することを可能にしまし た。本システムでは救急車内に設置した複数のカメラから傷病者の画像を伝送できるだけでなく、これらの画像から傷病部の三次元画像を構成することを可能と しています。また、救急車内に設置されたタッチパネル式コンピュータによって傷病者の観察情報を迅速に入力することを可能とし迅速な受け入れ先病院決定を 可能としています。
実証実験レベルでの研究開発は昨年度より実際の現場への導入準備へと段階を進めており、今回の実証実験もその一貫として行われます。そこでこのMobile ERの現状を広く知っていただくため、今年も公開実証実験を下記の通り行います。

【公開実証実験】
日 時: 平成23年2月11日(金) 11:00から
場 所: 生駒市消防本部
奈良県生駒市山崎町4-10
http://www119.city.ikoma.lg.jp/

【公開実証実験の内容】
救急車の救急隊員による動画像や3D画像を利用した傷病者の観察情報集約と複数の医者への迅速な情報伝達の様子を公開。

【概要】
開 発したシステムは救急隊員が装着するウェアラブルコンピュータシステムと救急車内の2つの首振りカメラ、コンピュータを核にした次世代インターネット通信 システムから構成されます。今回は40Mbpsクラスの広帯域ワイヤレスブロードバンドであるWiMAXを用いることにより、隊員が装着するウェアラブル コンピュータシステム、車内に設置されるカメラなどからの複数の動画像ストリームを円滑に消防指令本部や救急救命センターに送ることが可能となります。
ウェ アラブルコンピュータシステムは、装着型のカメラ及びコンピュータを用いることで隊員の作業を邪魔することなく様々な視点から患者の様子を撮影可能です。 また、救急車内に設置された2つの首振りカメラはタッチパネルインタフェースにより簡単に傷病部の位置を指定し、動画像を撮影することができます。さら に、2つのカメラを利用することで傷病部の3D立体画像を撮影でき、3Dテレビを用いることで医者は立体的な画像で傷病者の状況を把握することが可能で す。
これによって複数の受け入れ先候補に同時に情報を送出し迅速に受け入れ先を決定することを可能にします。さらに、これまで音声のみで伝達され た傷病者の観察情報を2D/3Dの動画像を用いて伝達することで、誤った情報伝達や情報の曖昧性が低減され、救急活動のより一層の質の向上が期待されま す。

【 開発されたシステムの特徴 】
● 車載用次世代インターネットシステム
  観察情報集約・伝達システムの開発
  ・タッチパネル操作による救急車内での迅速な観察情報入力
  ・ウェアラブルカメラとパンチルトカメラを併用した患者の画像・動画の添付
  ・3D画像伝送による傷病部の立体的提示
 WiMAXによる広帯域ワイヤレスブロードバンドネットワークシステム
● 救急隊員用ウェアラブルコンピュータシステム
  装着型カメラ/コンピュータを用いることで隊員の作業を邪魔することなく患者の様子を撮影することが可能

研究開発を担当する本学担当者は以下のとおり
・ 情報科学研究科 インターネット・アーキテクチャ講座 教授 砂原 秀樹
・ 〃 環境知能学講座 准教授 神原 誠之
・ 〃 総合情報基盤センター 助教 寺田 直美

なお、本システムの開発にあたっては、以下の組織と連携・協力をいただいています。
UQコミュニケーションズ株式会社、
ウェルチ・アレン・ジャパン株式会社、
株式会社エジックス、
デジタルリサーチ株式会社、
(株)インターネットオートモビリティ研究所、
WIDE Project、
インターネットITS協議会 (順不同)

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