寄生植物が宿主に接近するメカニズムの解明 -病害寄生雑草による農業被害を防ぐ方法の開発に期待-

研究成果 2022/08/18

寄生植物が宿主に接近するメカニズムの解明
-病害寄生雑草による農業被害を防ぐ方法の開発に期待-

概要

 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター植物免疫研究グループの小川哲史訪問研究員、白須賢グループディレクター、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の吉田聡子教授、ツイ・スンクイ助教らの国際共同研究グループは、根寄生植物[1]が宿主植物に向けて根を伸ばすメカニズムを発見しました。

 本研究成果は、世界中で主要な穀物に寄生し深刻な収量減少を引き起こす、根寄生植物の被害を撲滅する方法の開発に貢献すると期待できます。  根寄生植物は、①宿主となる植物が近くにいることを認識し発芽する、②自身の根を宿主の根に向けて伸ばす、③根を連結させ栄養や水を奪う、という3段階を経て寄生を完了させます。このうち、①と③については研究が進められてきましたが、②の屈性[2]と呼ばれる現象のメカニズムについてはほとんど明らかになっていませんでした。

 今回、国際共同研究グループは、ハマウツボ科寄生植物のコシオガマ[3]が宿主の根から放出される根圏情報物質のストリゴラクトン(SL)[4]に対して屈性を示すことを発見しました。この屈性はアフリカなどで農業被害を引き起こしている同じハマウツボ科のストライガでも見られる一方で、非寄生植物では見られないことから、ハマウツボ科寄生植物に特有の戦略である可能性があります。また、SLへの屈性には植物ホルモン[5]であるオーキシンの輸送が関与すること、屈性はアンモニウムイオン[6]の存在下では抑制されることを発見し、さらにSLを認識して屈性を引き起こす受容体を同定しました。

 本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』(8月15日付)に掲載されました。

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問い合わせ先

研究に関すること

  • 理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ
    訪問研究員      小川 哲史(日本学術振興会 特別研究員 PD)
    グループディレクター 白須 賢(環境資源科学研究センター 副センター長)

  • 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域
    教授 吉田 聡子
    助教 ツイ・スンクイ
    TEL:0743-72-5481、0743-72-5521
    E-mail:satokoy[at]bs.naist.jp、songkuic[at]bs.naist.jp

報道に関すること

  • 理化学研究所 広報室 報道担当
    E-mail:ex-press[at]riken.jp

  • 奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 渉外企画係
    Email:s-kikaku[at]ad.naist.jp

※上記の[at]は@に置き換えてください。

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