研究成果 2022/10/13
ストレス下でも植物の正常な細胞分裂を進める CPC複合体の局在機構を解明
染色体の特定部位に局在して機能
~動植物間でタンパク質レベルの収束進化があった~
概要
奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑 一裕)先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 植物二次代謝研究室の小牧 伸一郎助教は、オランダのフローニンゲン大学、ベルギーのゲント大学、ドイツのハンブルク大学との共同研究により、植物にストレスがかかった時に、細胞分裂の進行状況をチェックして正常化するなど重要な役割を果たす「染色体パッセンジャー複合体(CPC)」と呼ばれるタンパク質複合体が、染色体上の特定の部位に局在する機構について、モデル植物のシロイヌナズナを使い、明らかにしました。
CPC複合体は、異なる機能を持つタンパク質が連係して構成され、触媒である「オーロラキナーゼ」を足場の役目をするタンパク質群が適切な場所に運ぶことで機能します。 今回の研究では、この足場タンパク質群に含まれる「BORI1」と「BORI2」というタンパク質を発見しました。BORI1とBORI2は、共通する領域としてFHAドメインと呼ばれるアミノ酸の配列を持っており、このドメインが染色体のリン酸化されたヒストンタンパク質を認識し結合することで、CPC複合体を正しく、キネトコア(動原体)という部位に局在させることがわかりました。 一方、動物と酵母ではサバイビンというタンパク質が、BIRというドメインを介してCPC複合体をキネトコアに局在させることが知られていました。そこで、BORIとサバイビンのアミノ酸配列を詳しく比較し解析したところ、これらのタンパク質には共通するごく短い配列が保存されており、進化の初期段階に登場した生物はこの短い配列のみを持っていたことを見出しました。このことから、進化の過程でFHAとBIRという異なるヒストンのリン酸化認識ドメインが付加されることで、現在の生物が持つ、同じ機能でありながら全く異なるドメインから構成される「BORI」「サバイビン」という2種のタンパク質が誕生したことが明らかとなりました。
この研究結果は、類似した形質を独立に獲得する「収束進化」がタンパク質レベルでも起きていることを明らかにし、動物や酵母ではよく知られていたサバイビンの本質を再定義する結果につながりました。また、植物をはじめこれまでサバイビンが見つかっていなかった多くの真核生物においてBORIタイプのタンパク質が存在することが分かり、CPC複合体のキネトコア局在機構の理解に大きく貢献するものです。
この研究成果は、2022年10月13日付で、米国科学アカデミー紀要(doi.org/10.1073/pnas.2200108119)に掲載されました。
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問い合わせ先
<研究に関すること>
- 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 植物二次代謝研究室
助教 小牧 伸一郎
TEL:0743-72-5485 E-mail:shini-komaki[at]bs.naist.jp
研究室紹介ホームページ:https://bsw3.naist.jp/tohge/
<報道に関すること>
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TEL:0743-72-5026/5063 FAX:0743-72-5011 E-mail:s-kikaku[at]ad.naist.jp
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