
探求し、質問し、協力し、自分自身に挑戦することを恐れない

ウィタワット・タンチョンパイロートWithawat Tangtrongpairoj
カセサート大学(タイ) コンピューター工学科 助教
2016年度博士後期課程修了
情報科学研究科 ネットワークシステム学研究室
ウィタワット・タンチョンパイロートと申します。現在、タイのカセサート大学のコンピューター工学科で助教として働いています。奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)では、ネットワークシステム学研究室において岡田実教授のご指導のもと、自身の研究を行い、情報科学研究科で博士後期課程を修了いたしました。
NAIST在学中は、光ファイバ無線(RoF)システムと無線アクセスネットワーク(RAN)を中心に研究を進めました。特に光学技術を活用することによる無線通信システムの効率と柔軟性の強化を目標としていました。この研究を通して私の技術的な専門知識は深められましたが、それだけではなく、現在私が学術的・職業的役割を果たす中で、問題解決やイノベーションに取り組む方法もこの研究を通して身につけることができました。
NAISTでの私の経験は、学術的にも個人的にも私を大きく変えてくれました。最先端の設備、強力なサポート体制、協力的な国際コミュニティーを利用できるNAISTの環境は、非常に研究に適しています。奨学金を通して、また、さらに重要なことなのですが、指導教員、スタッフ、仲間の学生からの温かな助言を通して、手厚い支援をいただきました。NAISTでは互いを尊敬し、自由な意見交換を行い、限界を押し広げようとする文化を育んでいたことを今も思い出します。NAISTのこれらの要素が、学術的成長のための申し分のないエコシステムを作り出しているのです。
現在、カセサート大学での私の務めは、学部及び大学院の授業を担当し、学生の研究を指導することに加えて、ネットワークシステムや新たなテクノロジーの分野でさまざまな共同プロジェクトの指揮をとることです。NAISTで築いた強固な基礎をもとに、通信システムとネットワークアーキテクチャの分野を中心に研究を続けています。
私が特に誇りとする成果の一つは、博士前期課程と博士後期課程両方の学生を対象とした、NAISTとカセサート大学のダブル・ディグリー・プログラムを、チームの一員となって設立したことです。この共同プログラムには2つの主要な分野が含まれます。コンピューター工学科と材料工学です。このプログラムにより、タイと日本の学生は、両方のキャンパスで研究を行うことができ、より広い視野を得て、国際的な専門知識に触れることができるようになります。このプログラムはNAISTが目指す学術協力と知識の共有の精神を表すものであり、設立のイニシアチブに貢献できたことを大変光栄に思います。
また、私はタイにNAIST同窓会(TNAA)を設立しました。これはNAISTの同窓生同志のつながりを強め、NAISTとカセサート大学との関係を育むことを目的としています。この同窓会ネットワークは、国境を越えて広がる共同研究、学術交流、さらには個人的な友好関係を促進するのに役立っています。NAISTで結ばれた絆が卒業後もさらに強くなっていくのを見るのは、非常に充実感があります。
岡田実教授は、指導教員というだけではなく、私の人生のさまざまな側面で指導的存在としてずっと影響を与えてくださっています。岡田先生の思いやり、忍耐、そして見識から、単に研究の方法論以上のことを学びました。いかにして信頼に足る人間になるか、いかにして謙虚に働くか、いかにして日本での生活に適応するかを岡田先生は教えてくださいました。今でも年に数回は、学会や出張の際にお会いしており、岡田先生が私の教授であり指導者であるということは非常に幸いなことだと思っております。
今、NAISTに在学中のみなさん、みなさんはとても特別な環境にいます。みなさんを取り巻く有利な状況、つまり優秀な教授陣、協力的なスタッフ、充実した研究環境、仲間との強力な繋がりは、どれも成功するために必要なものです。NAISTのキャッチコピー、「無限の可能性、ここが最先端 -Outgrow Your Limits- 」は、単なる標語ではなく、みなさんが実現してくれることを待っている現実です。NAISTで過ごす時間を最大限に活用してください。探求し、質問し、協力し、自分自身に挑戦することを恐れないでください。みなさんの足元には確固たる土台があるのです。それを足がかりに、さらなる高みに到達しましょう。次はあなたの番です。
私はいつまでも変わることなくNAISTの精神を持ち、できる限りのあらゆる方法で、そのレガシーに貢献し続けたいと思っています。全てのことについてNAISTに感謝します。
※英語で寄稿いただいたものを日本語に翻訳し掲載しています。

NAISTとカセサート大学のダブル・ディグリー・プログラムについて議論

左から、Wanchai Yodsudjai教授(カセサート大学工学部学部長)、ウィタワット・タンチョンパイロート助教(TNAAの副会長)、Yuttakorn Yuttakornkit博士(TNAA会長)、塩﨑一裕教授(NAIST学長)。タイ-NAIST同窓会(TNAA)のキックオフシンポジウムにて