今振り返っても楽しんだ研究活動
荒木 靖宏Yasuhiro Araki
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 パブリックセクター技術統括本部 エマージングテクノロジー本部 本部長
1999年博士前期課程修了
情報科学研究科 計算機アーキテクチャ講座
私は1997年から博士前期課程の2年間、奈良先端大の情報科学研究科 計算機アーキテクチャ講座に所属していました。当時は、インターネットや電子メールのような学外と関わる事や、より良い計算機環境を育てていくような事は、学生ボランティアで管理運営されていました。お世話になった研究室をはじめ、いくつかの研究室ではその学生ボランティアが多数在籍していました。
電子メールシステムもそのひとつで、入学直後から私はボランティアで運用に関わっていました。博士前期課程1年の秋ごろから、インターネットでは迷惑メール対策の必要性が叫ばれるようになり、ある日多忙な前任者から完全に引き継ぐ事になりました。その経験を通じて、電子メールシステムの高速安定運用と電子署名利用を修士論文のテーマに選定したのは、私にとっては自然な事でした。修士論文提出の翌日から修了の日まで、奈良先端大の新メールシステムの構築を行ったのも良い思い出です。
そんな経験もあり、メールサービスのSaaSを仕事とし、モバイルネットワークの研究を加えて、2010年に東京大学で博士号を取得しました。これらは、出来る事を積み上げた(forward)の研究です。
現在、私の業務は顧客が企画するシステムを、クラウドサービスを使って実現する事です。顧客にとっては企画がはっきりしたゴールであり、backwardで進めていきます。現職では、理想的な顧客体験を定義し、それを実現するために必要な行動を逆算する方法として 'Working Backwards' が徹底されています。これは、研究であれば、「研究の意義」を明確にしてから取り組むような方法です。
今振り返っても楽しんだ研究活動でしたが、当時backwardで研究の意義を強く説明できていたら、教員、研究室メンバー、設備その他、奈良先端大にあるすばらしいリソースをもっと使えたのではと思う事があります。後輩の皆さんは、悔いのないように研究に取り組んでみてください。
顧客ネットワーク環境について同僚と議論中