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研究者紹介 vol.3 バイオサイエンス研究科 分子情報薬理学(伊東研) 梶 紀子 助教

東北大学大学院生命科学研究科博士課程修了。専門は情報伝達分子解析。

研究者への道のりと、本学の研究環境

子どものころから研究者になろうと思っていたわけではありませんでしたが生物に対して興味があり、東北大学理学部生物学科に進学しました。大学4年生のときに細胞生物学の研究室に所属し、そこで初めて細胞を顕微鏡で観察するということをして、研究は面白いと思いました。細胞骨格は細胞の中で細胞を支える骨格ですが、体の骨とは違って、ダイナミックに伸びたり縮んだりします。細胞骨格の構築が適切に制御されることで細胞が移動したり分裂したりするのですが、その細胞骨格や細胞の動き、分裂などの観察に魅了されました。
そのまま大学院に進学して、修士を修了したら就職しようかなと思っていたのですが、まだ誰も知らない新しいことを見つけられる、ということに研究の楽しさを感じました。それでやはり研究を続けたいと思い博士後期課程まで進みました。博士号を取得した後、ポスドクとしてアメリカに4年半滞在しました。
それから東北大に助教として戻り、その1年後に奈良先端大の助教に着任しました。奈良先端大は共通の設備・機器がちゃんと揃っているところが研究環境として良いと思います。シーケンサーや顕微鏡など実験をしたいときに使える設備が整っているので、何か新しいことを始めたいときも自分たちで一から準備しなくてもいいのでいいですね。あとは机や椅子、簡単な台所があるリフレッシュコーナーが各フロアにあるのもいいですね。他の大学ではあまり見ないですよね。学生がここでお昼ご飯をつくったり、壁にスライドを投影して発表練習をしたり。今日は修論発表がすべて終わったので、ここでお疲れパーティをするんですよ。

研究と教育

朝は9時半に研究室に出勤します。そこから18時までがコアタイムなのですけれど、18時に帰宅することはほとんどなく20〜21時頃までいることが多いです。残って実験をしている学生もいますし、修士論文提出の前あたりはとくに遅かったですね。
研究室では、スタッフルームを秘書の方と、もうひとりの助教とで共有していて、ここに学生が質問やディスカッションをしに来たり、お茶を飲みに来たりします。自分で実験もしているので、実験室かスタッフルームのどちらかで一日を過ごしています。
学生は修士課程で卒業していく人が多いので、先輩の学生が後輩に教えるというよりは、私が直接教える場面が多いです。日本語がわからない留学生もいるので、英語で会話することになります。所属している学生の人数も多く、修士課程の学生が13人、博士課程の学生が8人いますので、学生への実験の指導やディスカッションなどにかける時間は長くなっていますね。

奈良先端大に来るまでは、たくさんの学生を指導する経験が少なく、学生の教育ということに不慣れな部分があり、教育をしながら研究成果も出すということの難しさも感じています。ですが、たくさんの学生たちと関わり、一緒に研究をしていくことでいろいろと学べることも多いです。一緒に研究を進めている学生の実験がうまくいった時は、私も嬉しいですし、学生と一緒に成長していきたいと思っています。

ラボ選び

私が今まで所属してきた研究室には、女子学生が2〜3割程度いました。生物系は比較的女子学生が多いです。アメリカ留学した際の研究室では、研究室の半数以上が女性でした。
女性であることが研究をする上で不利であったかというと、個人的にはこれまであまりそういうことは感じてきていません。ラボ選びでは、もちろん研究内容を一番重視していますが、研究室の雰囲気もみています。幸いにして良いPIの方々や研究室に巡り会い、女性であることで苦労するということはなくこれまで来ました。

女性であること、研究者であること

私は自分自身が女性であることを特別には感じずにこれまで生きてきたように思います。大学院生の頃に、周囲の人から「いつまで学生をしているんだ、女の子なのに」というようなことを言われた経験がないわけではありませんが、そういう小さなこと(人によってはそれが小さなことではない場合もあるかもしれないですが)はあまり気にはなりませんでした。そういうことが気にならないくらいには研究に魅力を感じていたのだと思います。
しかし、研究、仕事をする上で、女性であるということを意識せずにいられるのは、私が出産、育児をしていないからだと思います。今は自分の時間を自由に自分のために使うことができますが、家庭と研究を両立させなければならない状況になったら、女性であるということについて、あらためて感じることがあるかもしれません。

研究者を目指す学生に伝えたいこと

私が研究の道を目指し始めたのは、先ほどお話したように、大学4年生のときに細胞を観察するのがおもしろいと思ったことがきっかけでした。また、まだ誰も知らない何か新しい発見を、私でもすることができるということにとても楽しさを感じ、それが研究を続ける動機になっています。不思議だ、おもしろいと思ったことを追いかけてきて、楽しいと思う方向に向かって進んできて、今があります。海外へも、次はどこへ行こうかと考えたときに、おもしろいと思った研究テーマに取り組んでいた人がたまたまアメリカにいて、それでアメリカに行くことを決めました。海外で生活することには不安もありましたが、いざ行ってみると充実した留学生活を送ることができました。だから、何か興味をひかれることを見つけられたら、それを追いかけて動いていけばいいのではないかな、と思います。研究は楽しいですよ。

(平成29年3月)

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