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大阪大学大学院薬学研究科博士後期課程修了 博士(薬学) 同大学で助教、特任准教授を経て、2016年8月に准教授として本学に着任。専門分野は、実験動物学、発生工学。異種間キメラ動物体内で移植用の臓器を作るというテーマを主軸に、受精卵を操作して様々な動物モデルを作っています。

研究者への道のり

子どもの頃は漫画家になりたいと思っていましたが、1989年頃に手塚治虫さんの漫画「火の鳥」を読み、クローン人間に強烈な印象を持ちました。全く同じ生物がたくさん作れるということに興味を持ち、そのような研究をしたいなと思ったことを覚えています。その後、高校生になって進路を決める時に、自分がおもしろいと思えるのはサイエンスであると思い、将来は研究者になりたいと考えました。当時、家庭の事情で理系では薬学部しか目指せない環境であったこともあり、薬学部に進学しました。また、大学入学直前に報告された1997年のクローン羊のドリーの出現には大きな衝撃を受けました。学部では、クローンをつくる発生工学技術の基盤となる生殖細胞を使って体外受精の研究をしている研究室が運良くあり、そこに所属しました。修士課程ではクローンをつくる技術の発生工学技術を使った研究に取り組みたいと考え、大阪大学大学院に進学しました。そこで研究テーマとしてキメラを与えてもらい、発生工学の研究に携わるようになりました。そして博士後期課程、助教、特任准教授まで大阪大学で過ごした後に、本学に着任しました。

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本学の研究環境はとてもよいですね。新しく研究をスタートするための共通機器も揃っているし、事務スタッフのみなさんも協力的で、すばらしいと思います。研究資金の確保などストレスはもちろんありますけれど、研究の遂行に不自由するということは思った以上になかったです。

一日のスケジュール

朝は8時半に大学に来て、20時に帰る生活をしています。8時半から10時前後くらいまでメール仕事や事務処理をしたあと、細胞培養室や動物実験棟で3時間くらいを過ごします。午後は学生とディスカッションを2,3時間、そしてメール仕事や事務処理、論文からの情報収集や実験で数時間を過ごすというスタイルです。

遺伝子組み換え動物をつくる実験は、さまざまな技術が組み合わさって、すべての工程に一定のテクニックが必要で、習得するまでにかなりの時間がかかります。これまで20年近くの研究を通して身に染み込んでいる動作を学生に教えながら、手技のひとつひとつを再確認しているところです。でも熱意を見せる学生しか習得しませんね。
土日はなるべく大学に来ないようにしているのですが、細胞培養やマウスへのホルモン投与などがあると、たいていどちらかは数時間来ます。どれだけ好きな研究でもずっと継続をしていると挫折もありますし、意識してリフレッシュしないと煮詰まってしまうと考えていて、趣味もいろいろともっています。

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将来研究者を目指す学生に向けて

私が研究を続けられるモチベーションのおおもとは「なにかわくわくする」です。応用を目指した研究にも取り組んでいますが、研究というのはまずなにか発見の驚きがあって、その次に応用研究があるのだと思います。研究者はこの驚きに喜びをもっているのではないでしょうか。
研究とは何か仮説を立てて検証するものというイメージをもたれているかもしれないですが、私は「こんな未来が現実になったらおもしろいかもしれない」に常にわくわく感をもってきました。だから突拍子もないことを考えているんですね。これができたらどうなるだろうと考えているとアド レナリンがばっと出るときがあります。そして次に、どうすれば実現するのか、つまり仮説を立てます。それから、それが実現した場合、どういう世の中になって、どのように役に立って広まっていくのかを考えます。

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昨今は企業が修士号をもっている人材をニーズとして求めていることもあって、大学院のあり方が変化しているように感じます。研究とは、何かのテーマを深く掘り下げていくことですが、働き始めたら追究した内容は必要がなくなります。でも、何かを突き詰めるためにどのような段階が必要かは、研究を通して習得することができます。そのステップの踏み方は、企業に就職をしても、アカデミックに残っても必ず必要になると考えています。

子育て中の研究者の現状と課題

私の知り合いの研究者には子どもを育てながら研究をしている人も複数いますが、いわゆる常勤のポジションではありません。常勤職に就きたくても就けない人もいると思いますが、同時に常勤のポジションに就くと責任が伴うのでアプライを控えているという現状もあるのではないでしょうか。みなさん、ラボを持てば家庭だけでなく仕事にもプレッシャーを抱えることになるので、そういう環境を選ぶことが難しいのかもしれません。私のように24時間自分の時間であるほうがやっぱり仕事はしやすいですからね。

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本学の両立支援は充実していると思います。本来、こういった課題に対しては国が政策でなんとかするべきとも思いますが、本学のイクボス宣言であるとか両立支援施策は、アプライを悩んでいらっしゃる方に届くように、もっとアピールしてもよいのではないでしょうか。

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(平成30年6月)

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