結果を多角的に見ながら意見交換を繰り返すことの大切さを学ぶことができた
下保 瑶己Shitabo Tamaki
三菱商事ライフサイエンス株式会社
2022年度 博士前期課程修了
先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 バイオサイエンスプログラム 花発生分子遺伝学研究室
私は食品素材メーカーである三菱商事ライフサイエンス(株)に入社し、現在、健康的な体の維持に重要な成分の一つとして注目されるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の物性改良、製造コスト削減などに向けた実験や機器分析、データ解析を行っております。弊社は、うま味調味料や酵母エキス、健康食品素材などを開発・製造し、国内外のメーカーに幅広く製品を提供しており、人々の食と健康に様々な場面で貢献できるのが魅力と感じております。
大学院時代では伊藤寿朗教授率いる花発生分子遺伝学研究室にお世話になり、当時から『人々の食に貢献したい』という思いから、食糧増産に繋がる植物の種子の研究をしていました。研究では、数千粒もの長さ約0.5mmの種子を様々な顕微鏡を用いて観察をしていました。そして、撮影した顕微鏡画像に目を凝らし、助教の先生と毎日のように意見交換したことを今でも覚えています。細かな現象や数字に目を向けながら、仮説立てとデータ取りを繰り返したことで、最終的に有望な種子を発見したことに達成感を得ていました。このような経験から地道な作業で粘り強く結果を積み重ねることと、得た結果を多角的に見ながら意見交換を繰り返すことの大切さを学ぶことができ、それが大きな成果に繋がるという経験をすることができました。このことは、現在の業務をする上でも非常に役立っています。実例をお話しますと、現在の業務であるNMNの物性改良では、顕微鏡で結晶を観察しながら、製品品質と生産効率を高める結晶化条件を探索しています。業務では大学院での専攻である生物とは異なり、化学や物理の知識を扱うことが多いですが、奈良先端大での経験を活かし日々地道に実験と解析、上司や同僚との意見交換を繰り返すことで、生産工程へ技術導入できるように挑戦を続けています。
奈良先端大は最先端の研究にとことん取り組める環境が整っております。後輩の皆様はぜひ研究生活を全力で楽しんでください。最後に、温かく熱心に指導して頂いた先生方、そして共に切磋琢磨した研究室メンバーに感謝申し上げます。
NMNの物性改良実験の様子。様々な実験条件を試しながら、製品品質と生産効率を高める結晶化条件を探索しています。