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2002年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了。博士(工学)。同年同大情報科学研究科助教。2010年同大准教授。専門分野は、複合/拡張現実感、環境知能、ヒューマンロボットインタラクション。

研究者への道のり

1997年に岡山大学から本学の修士課程に進学しましたが、院生時代、助手助教時代を含め、機械と人間がどうやってコミュニケーションをとれるのかを主軸に研究を進めてきました。研究テーマの多くは、自分の私生活から要求を得ています。たとえば、「だべらいぶ」という対話ロボットは、家で阪神戦をみていて福留が打って「よしっ!」と喜んでいたら、家族はみんなしーんとして、だれもいっしょに喜んでくれない、こんな寂しいことがあろうかと思ったことが契機でした。これは独居の方も同じでしょう。ひとりでぼーっとテレビを観るのは脳も活性化しなくてよろしくない。だから、おもわずだべりたくなるロボットが必要だと考え研究を進めています。自動走行に関する研究は、他人の運転する車の助手席に座ると自分の思っている運転と異なるので、怖くてしかたがないという体験が根っこにありました。怖くて不安な状態が続くとなると、そんな車には乗っていられないとなります。いつブレーキを踏むか、どんなルートを選ぶかということを人間と車といかに情報共有するのか。安全という尺度だけでは、ロボットとしては数センチくらい壁から離れて通過すればいいのですが、人間がそれを体験すると怖い。車に「安心できる走り方」のできる知能が必要で、それによって人間の快適性が上がるための研究をしています。

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これらは、人間がロボットに触れ合った時に「こいつおもしろいな」「こいつ知的やな」と思って使いたくなる、やみつきになってしまう、そんな知能をロボットに載せる研究ということになります。
私は学生にもやりたいこと、つくりたいものを作るようにしないといけないと常日頃から言っています。研究は、これを使ってなにができるだろう、ではなく、自分があったらいいなと思うことを問題設定として掲げたうえで進める必要があります。

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日々のワークライフバランス

普段の生活ですが、平日は子ども達が7時半に家を出て小学校に向かいますので、私もそのタイミングで家を出て、仕事場に来ています。夕方は18時か19時には帰宅して家族で夕飯を食べます。その後は、夜に仕事をしたり、朝方にしたりですね。家事はごみ捨てはたまにしますが、それ以外はあまりしていないです。

ワークライフバランスは子どもの有無によって違ってきますね。子どもがいないときは仕事がおもしろくて家にはほとんど帰っていませんでした。当時はその生活スタイルを崩したくなくて、結婚もしたくないし、子どもも欲しくないと思っていました。しかし、そうもいかずに結婚をし、結婚をしただけでは生活は変わらなかったですが、子どもができて変わりました。私が子どもをお風呂に入れなければならないからです。2006年に一番上の子が生まれて以来12年間、「はよかえらなあかん」というプレッシャーがあって、それがDNAに組み込まれて、夕方近くになるとそわそわしてしまいます。ミーティングで夜遅くなるとプレッシャーを感じますね。とくに子ども達が0歳、5歳、6歳のころはほんとうに大変でした。私と妻の両親は遠方に住んでいてどこにも頼れず、妻は子育てをひとりで回していましたから。これから子ども達の手が離れてきて、妻に早く帰ってこなくてもいいと言われたら大学に残って仕事するようになるかもしれないですね。

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情報領域は出張が多いのですが、出張のときも妻は大変だったと思います。本学に出張時保育支援の制度があることは今まで知りませんでした。子ども達が大きくなってきたので今から使うことはないかもしれませんが、私が子ども達のうち一人を出張先に連れて行くだけで妻はだいぶ楽でしょうから、知っていたら使えたらよかったかもしれません。
今の状況を崩したくないという理由で結婚しない、子どももたないというのはよろしくないと今は思いますね。私は子どもが好きではなかったですが、自分に子どもができて、子育てをしたら楽しいと思うようになりました。学生にはいろんな意味で食わず嫌いにならないで欲しいと思います。

ロボット研究に多様な発想を

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研究室にはおおよそ2年ごとに女子学生が在籍し、修了していきます。彼女らをみていると、研究に性別は関係ないと思います。研究において大切なのは、やはりやりたいことを見つけることです。
本学が今後、女子学生を増やしたいといっても、そもそも母数がないと増やせないので、高校生くらいから理系に行きたいと思わせる草の根運動が必要かもしれません。とくに情報領域はイメージに問題があると思います。起業で成功しているのもfacebookやgoogleなど創始者は男性のものばかりですから。ただ、やりたいことみつけるというとき、女性にしか思いつかない発想があることは、これまでにたくさんありました。

ひとつは、ハグするロボットです。大きいぬいぐるみのロボットを抱くと背中をとんとんとんとしてくれて、それによってどんなふうに気持ちが変わるかという研究でした。男性はこの発想は思いつかないですね。おもしろい研究だと思いました。もうひとつは、殴りたくなるロボットです。これも柔らかいロボットなのですが、殴るとロボットが「やめて」か「ぜんぜん痛くない」と言う設定で、それぞれの反応に対してどんな気持ちになるかを検証しました。結果、ストレス発散には、スポーツタイプとSタイプとあるとわかりました。殴ったのに「ぜんぜん痛くない」のように憎たらしいことを言うロボットも必要かもしれないということですね。このように、ロボットとのコミュニケーションで女性には男性が思いつかない発想があると思いました。ロボットのユーザーは男女関係ないので、女性の研究者がこういった研究に取り組んでくれないと、女性が欲しいロボットはつくれないのではないかと思います。

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(平成30年6月)

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