ホーム  > メッセージ  > 研究者インタビュー  > 研究者紹介 vol.17

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2002年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。同年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所に勤務。2015年京都大学大学院で博士(情報学)の学位取得。2017年4月より奈良先端科学技術大学院大学准教授。専門分野は機械翻訳、自然言語処理、音声言語処理。

研究者への道のり

修士課程を修了してからNTTの研究所で15年間働いていました。その間に博士号をとって、約二年前に本学に転職してきました。会社でもインターンシップの学生の指導をしたり、博士号取得後は非常勤講師をしたりもしていて、将来は大学に転職をすることを考えていたところ、縁あって移ってきました。
現在は機械翻訳を専門としているのですが、子どものころからそれに興味があったということは全くないです。ただ、高校生のころから情報系には興味があって、修士課程では画像処理をテーマにしました。NTTに就職後、音声対話の研究をすることになり言語処理に取り組み、ここ10数年は機械翻訳をテーマにしていますね。

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この研究室には修士・博士課程合わせて40名以上が在籍していますが、今の学生は、私が学生の時に比べたら優秀だと思います。この研究室は留学生が多いこともあってゼミなどの使用言語は英語ですが、私自身は修士課程のときに国際会議の発表でへろへろになっていたことを思うと、ずっと優秀だなと思います。学生はそれぞれ出身大学も学部も違うところから入学してきますが、それぞれおもしろいことを考えて取り組んでいると思います。

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一日のスケジュール

前職のときに子どもが産まれて、いま3歳になるのですが、独身の頃から現在まで、私の基本の生活スタイルは、7時前に出勤し17時に帰る、です。朝は海外を除けばメールもこないし、9時くらいまでは仕事がはかどります。夕方はゼミで遅くなったとしても18時までには帰ります。どうしてもというときは19時を過ぎるときもありますが、できる限り早く帰るようにしています。17時に大学を出れば、夕飯を子どもと一緒に食べられます。18時になれば、夕飯は無理でもお風呂は一緒に入れます。19時を過ぎるとお風呂も怪しくなってくる。そうなると一日子どもと会わないことになってしまいます。私が子どものときは、父親はほとんど家にいなくて会えなかったですからね。

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家事は正直妻の負担が大きい状況ですが、私が保育園のお迎えをする日は夕食をつくります。前職で在宅勤務をしていた頃は昼食も夕食も作っていましたし、料理はそんなに負担ではないです。ただ、最近は在宅勤務をしていないので、動き回って話かけてくる時期の子どものいる状況での家事のたいへんさはわからない部分があり・・・そのあたりの負担はいま全部妻に回っているわけです。休みの日に私ができているのは全体でみれば一部です。
学会等の出張のときはすべて妻がやることになってしまいます。長い出張となると心苦しいです。長期出張のときには妻のご両親にサポートしていただくこともあります。こういったサポートがあって私は今の仕事ができているのだと思います。

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本学に求められる研究者支援

前職では、育児等の都合で在宅勤務が週平均2回まで可能だったので、妻の育休後はよく利用しました。子どもも小さかったので、寝ている間にプログラムを書いたり、論文を書いたり、スカイプで会議に参加したりできました。本学にも在宅勤務制度はありますが、事前申請が必要とのことでまだ使ったことがありません。前職では、私が在職中に当日に子どもが熱を出したら当日の申請でも利用できるような制度ができました。これはとてもよかったです。子どもが小さい時期はとくに体調が落ち着かないですし、突発的な事態が起きたときは当日申請可だと助かります。たとえば、所属する研究室の教授の承諾など、しかるべきところへの申請ができたら「月に何日まで利用可」とするなど。実際、多くの方は子どもの体調を理由に出勤できなかったとしても家でできることを考えたり、フルタイムは無理でも半日は仕事ができるという状況にあることもあるのではないでしょうか。こういったときに、オフィシャルな手続きがあれば助かるのではないかと思います。

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本人の「やりたい」を止めない

男性と女性ではたいへんさが違うのかもしれませんが、本学の場合は会議などの拘束もあまりないですし1週間単位で仕事と家庭の折り合いをつけてうまくコントロールしている先生は多いと思います。また、子どもが生まれたり、パートナーが入院した時期は、大学としても研究室としても、そういうときは家が大事という考え方で早く帰ることも可能です。中村先生は「家のことを大事にしなさい」と言ってくださいます。それはもしかすると「どんなときでも研究できるやろ」ということなのかもしれませんが、そういうふうにやれるのであまり困ったことはありません。子どもが保育園で熱を出してしまい、早い時間に退勤して迎えに行き、病院に連れて行ったことも何度かあります。妻と私とどちらかが都合がつけばそういう対応ができるわけですが、保育園や病院で周りも見ても、女性の側に負担がかかっていることが多いという印象です。

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本学の情報領域の女性教員の数は6パーセント程度で、前職の研究所でも周りに1割ちょっとでおそらく2割はいなかったような気がします。もともと情報系は工学部のなかでは女性が多いほうと思っていました。国際会議などで見る海外の教員や研究者の比率に比べると、国内は少ない印象を持っています。ただ、自然言語処理の領域では、女性研究者の会合が開かれて多くの方が参加されているようです。我々の分野は大がかりな実験設備の前にいなくても研究ができ、ライフイベントを理由に研究を続けることが困難な分野ではないはずなので、女性研究者の比率はこれからもっと増えてくるかしれません。学会が託児サービスを契約し子どもを連れて学会参加できるようになる等、子育て中研究者へのサポートも始まっています。学部や修士を出て企業で活躍するという道もありますが、博士に進んで研究者や教員という方も男女問わず増えてほしいと思っています。

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男女で能力に違いがあるということはないので、もっとこの分野をやりたいという人が増えたらいいなというのはずっと思っています。情報領域の「いつでも見学会」に参加してくれる方のなかには女性も多いです。ここのところ、情報の分野自体大きくなってきているので、今後この分野を志す女性が増えてくると信じています。ほぼすべての分野で、性別を理由にそれをやることを「うーん」と悩むようなものではたぶんないと思うので、本人がやりたいというのを周りが止めないということが大事だと思います。やってみたら?って。今後うちの娘が何をやりたいと言うか分かりませんが、好きにやったら?と思っています。

(平成31年3月)

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