ハゲタカジャーナル
ハゲタカジャーナル・ハゲタカ学会にご注意ください!
- オープンアクセス誌にはハゲタカジャーナル(粗悪学術誌)が数多く存在します。
- ハゲタカジャーナル回避のため投稿雑誌および出版社について十分にご確認ください。
- 共著論文が他研究機関から投稿される際にも投稿雑誌をご確認ください。
- 同様にハゲタカ学会にもご注意ください。
ハゲタカジャーナルとは?
学術雑誌のオープンアクセス化が進む中、ハゲタカジャーナル (predatory journal) と呼ばれる粗悪学術誌が数多く存在することが知られています。ハゲタカジャーナルは、十分な査読を行わず、掲載料収入を目的とするもので、論文の正当性や質が十分に保証されないまま論文が公表されるため世界的な問題となっています[1]。
ハゲタカジャーナルに論文を発表した場合、以下のような不利益が生じる可能性があります[2,3]。
- ・研究の正当性への不信
- ・著者に対する評価の低下
- ・論文受理後の不当な掲載費用の請求
- ・論文投稿および受理後の取り下げ不可
- ・不備のある論文による学術的混乱および社会的悪影響
- ・容易な論文掲載による若手研究者育成への悪影響
- ・雑誌の廃刊に伴うオンラインからの論文の消失
- ・著作権侵害への対処不能
- ・研究費および研究参加者や実験生物の非生産的使用
ハゲタカジャーナルの主な特徴として、以下の傾向が見られます[1,4]。
- ・emailで執拗に勧誘する
- ・ウェブが洗練されておらず誤字や文法の誤りがある
- ・出版社の所在地や連絡先の記載がない、もしくは偽った情報が記載されている
- ・編集委員が専門外である
- ・詳細な掲載料の記載がない
- ・査読の方針や過程が明瞭でない
- ・論文撤回や著作権譲渡に関する説明がない
- ・短時間での論文発表を謳っている
- ・ISI Journal Impact Factor等に似せた情報が掲載されている
ハゲタカジャーナルを避けるためには?
ハゲタカジャーナルの定義は統一されておらず、対象となる雑誌も明確ではありません。このような状況の中、雑誌の信頼性を確かめるためのチェックリストがThink. Check. Submit. から公開されています[5]。
このリストでは下記の確認項目が挙げられています。
- ・雑誌の知名度
- ・出版社の明記と連絡の容易性
- ・査読方針の明確性
- ・掲載論文の学術文献データベースへの採録状況
- ・掲載料の明瞭性
- ・編集委員会の有無と委員の知名度
- ・出版社の業界組織等への参加状況
雑誌の学術文献データベースへの採録状況や出版社の業界組織等への参加状況については以下をご参照ください。
基準を有する学術文献データベースへの収録状況:
Web of Science (Clarivate Analytics社)
Scopus (Elsevier社)
一定の基準を満たしたオープンアクセス誌要覧への収録状況:
Directory of Open Access Journals (DOAJ)
学術論文の出版規範に関する非営利組織への加盟状況:
Committee on Publication Ethics (COPE)
オープンアクセス出版社による協会への加盟状況:
Open Access Scholarly Publishers’ Association (OASPA))
ハゲタカの疑いのある雑誌および出版社については、アメリカのJeffrey Beall氏が1294誌および1155出版社を”Beall’s List”として2017年まで公開していました[6]。現在は匿名研究者がそれを引き継ぎ、疑いのある雑誌および出版社をウェブ上で公開しています[7]。
Beall’s Listについては、その判定基準から、ハゲタカジャーナル・出版社ではないものが含まれているとの指摘があります[8]。一方、ホワイトリストとしても用いられているDirectory of Open Access Journals (DOAJ) については、雑誌の追加と削除が頻繁に行われており、またBeall’s List等のいわゆるブラックリストと呼ばれるものに含まれている雑誌もみられます[9]。さらに、これまで健全であった雑誌がハゲタカジャーナルに変貌する場合も見られます[7]。このように、単一のリストのみでは雑誌の信頼性を判断できない場合もあります。
ハゲタカジャーナルを回避するためにも、論文を投稿する際は、雑誌について幅広く確認するようご留意ください。
ハゲタカ学会も存在します
ハゲタカジャーナル同様、参加費を目的とし十分な査読を行わないハゲタカ学会 (predatory conference) と呼ばれる学術集会が多数存在します。
学術集会の信頼性を確かめるためのチェックリストがThink. Check. Attend. から公開されています[10]。主催者・スポンサー、議題・編集委員会およびプロシーディングの各項目についてご確認ください。
ハゲタカの疑いのある学術集会については、アメリカのDana Roth氏によるリストがWeb上で公開されています[11]。ただし、リストにはないハゲタカ学会が数多く存在することにご留意ください。
ハゲタカ学会を回避するためにも、上記のチェックリストおよび疑いのある学術集会のリスト等をご確認ください。
文献
- [1] Grudniewicz A, Moher D, Cobey KD, et al. 2019. Predatory journals: no definition, no defence. Nature, 576, 210-212.
- [2] Ferris LE, Winker MA. 2017. Ethical issues in publishing in predatory journals. Biochemia Medica, 27, 279-284.
- [3] Richtig G, Berger M, Lange-Asschenfeldt B, Aberer W, Richtig E. 2018. Problems and challenges of predatory journals. Journal of the European Academy of Dermatology & Venereology, 32, 1441-1449.
- [4] Shamseer L, Moher D, Maduekwe O, et al., 2017. Potential predatory and legitimate biomedical journals: can you tell the difference? A cross-sectional comparison. BMC Medicine, 15, 28.
- [5] https://thinkchecksubmit.org/
- [6] Beall J. 2017. What I learned from predatory publishers. Biochemia Medica, 27, 273-278.
- [7] https://beallslist.net/
- [8] Olivarez JD, Bales S, Sare L, vanDuinkerken W. 2018. Format aside: applying Beall's criteria to assess the predatory nature of both OA and non-OA library and information science journals. College & Research Libraries, 79, 52-67.
- [9] Strinzel M, Severin A, Milzow K, Egger M. 2019. Blacklists and whitelists to tackle predatory publishing: a cross-sectional comparison and thematic analysis. mBio, 10, e00411-19.
- [10] https://thinkcheckattend.org/
- [11] https://libguides.caltech.edu/c.php?g=512665&p=3503029