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Juharni

物質創成科学領域 物性情報物理学 松下研究室 博士後期課程 2年

出身:インドネシア・南スラウェシ州

学部での研究内容:磁性材料の応用

大学院での研究内容:強磁性材料の3次元形状への応用

NAISTに入るまで

私は学部生の頃から磁気の分野に強い関心があり、それは現在まで続いています。インドネシアのアラウディン・マカッサル大学の物理学科を卒業後、ガジャマダ大学(UGM)で物理学を専攻し、修士号を取得しました。UGM在籍中に結婚し、母親になりました。修士2年生時の2019年12月にNAISTの博士後期課程事前審査プログラムに参加する機会を得ました。このプログラムのために来日した間、夫や親戚を含む私の家族は、当時2歳だった息子の面倒を見てくれました。

事前審査プログラムは、NAISTとUGMが共同で実施するもので博士課程への入学希望者を対象としています。このプログラムの合格者は2週間NAISTに滞在し、博士課程への適合性を判断することができ、私にとっては自分の研究テーマに適した研究室を迅速に決める絶好の機会となりました。自分の関心や希望に沿った様々な研究室を見学し、それぞれの分野で研究を牽引している先生方と直接交流することができました。そして磁性材料に特化した唯一の研究室である物性情報物理学研究室と出会いました。当研究室の服部先生と直接に私の研究テーマとの整合性について話し合い、その過程で貴重な洞察と知識を得ることができました。さらに、最先端の磁気測定装置があることもNAISTを選ぶ決意を固めました。

また、NAISTはムスリムの学生を受け入れており、礼拝のできる場所を用意するなど私の宗教的な慣習に配慮していると感じました。この安心感は、宗教的な義務を果たすことへの不安を解消し、進学への決意をより強くしました。

さらに、私が母親であることについて指導教員から多大なサポートを受けました。学内の一時託児室についての助言もあり、これは学業と個人的な責任を両立させようとする学生を支援する教育機関の姿勢を示すものでした。

現在の研究生活と女性のキャリア形成

現在、3次元構造における強磁性膜の研究に取り組んでいます。この研究は、サンプルの作製と、振動試料型磁力計(VSM)を用いた磁気特性の検査を含む様々な測定による特性分析を含みます。現在、実験の設計と実施、複雑なデータセットの分析、そして選んだ研究テーマの複雑さに対処するための研究手法の改良に中心的に取り組んでいます。

朝は9時か10時に研究室に来るのですが、息子は9:00−15:00まで子ども園に行っています。居住している大学寮の近くまで送迎してくれる通園バスがあるので助かっています。

息子が通っている高山こども園には、現在、インドネシア出身のNAISTの学生を両親にもつ子どもが5人いて、1ヶ月ほど前にはインドネシアの文化を紹介するイベントをこども園が企画しました。私たちは両親そろって、子どもたちと保育士の先生たちを前にインドネシアの楽器を演奏しました。高山こども園は生駒市内で唯一、給食にハラルフードを提供する園です。これはインドネシア出身であったり、ムスリムの親たちが高山こども園を選んでいる理由の一つです。

研究室での仕事が終わると、その日の内容にもよりますが、午後6時から7時半頃に帰宅します。家では家族のために時間を使うので、私はいつも研究室で仕事を終えるようにしています。母親であり、博士後期課程の学生でもある私は、時間管理能力、感情管理能力、マルチタスク能力、適応能力が求められます。なぜなら、NAISTの学生という義務に対してプロフェッショナルでなければならないからです。

インドネシアでは、子どものいる女性は仕事を持っていないことが多いですが、私の意見では、それは時間管理やモチベーションの低さ、あるいは夫や家族からのサポートがないことが原因だと思います。私の場合は、夫や家族が研究を続けることを全面的にサポートしてくれているので、感謝しています。私はどんな女性にも才能と可能性があると考えていますが、子どもの面倒をみるために時間と労力を割くことは才能と可能性を制限することになりかねません。

なぜ私がこのように考えるようになったかというと、私自身の母親からの励ましが関係しています。父は私が7歳の時に亡くなりましたが、以来、私の母親は私を育てるためにたくさんの仕事をしてきました。母は、女性は子どもがいたとしてもスキルが必要だ、もっと知識を身につけなさい、自立しなさいと私を励まし、ずっと母をロールモデルとしてきた私も母と同じように考えるようになりました。私のために祈り、モチベーションを高めてくれた母に本当に感謝したいと思います。

NAISTの研究環境

私はここでの学問の旅を心から楽しんでいます。しかし、真の課題は、3年というスパンの中で効率的に研究を完了させ、実質的な研究成果を生み出すことにあります。研究の中で、最も大きなハードルは言語と文化への適応に関するものです。言語に関して、先生方は日本語と英語をシームレスに使い分け、円滑なコミュニケーションを図ってくださいますが、日本出身の学生は英語が得意ではないのでコミュニケーションがスムーズにいかないこともあります。そのような時は翻訳機を使っています。

また、不慣れな文化的・社会的環境に慣れることは、刺激的であると同時に難しいことでもあり、伝統や社会規範、礼儀正しさを理解するためには時間が必要だと考えます。また、インドネシアは乾季と雨季の2つしか季節がないですが、日本には4つあり、来日当初は暑すぎたり寒すぎたりすることに慣れませんでした。花粉症によるアレルギーがあって春は特に頭痛が辛いですが、保健管理センターで薬をもらって凌いでいます。病気になったり、怪我をした時には、研究室のメンバーが病院に付き添って言語面で助けてくれます。この研究室は民族や宗教に関する差別はなく、まるで家族のようです。

※高山こども園の写真は、社会福祉法人北倭保育園さまにご提供いただきました。

(令和5年8月)

interview content

  • 2023.8 更新

    バイオサイエンス領域

    Biosciences

    Wong Hao Jie

    Wong Hao Jie

    Japanese

    English

  • 2023.8 更新

    情報科学領域

    Information Science

    畠中 渉

    Wataru Hatanaka

    Japanese

    English

  • 2023.3 更新

    物質創成科学領域
    Materials Science
    NIMATIL MABARROH
    NIMATIL MABARROH

    Japanese

    English