本日、奈良先端科学技術大学院大学にご入学される皆様、改めましてご入学おめでとうございます。
本学は我が国に4つございます大学院のみの国立大学法人でございます。塩﨑学長のお話にございましたとおり、高度の科学技術について研究し、人類に貢献するという責務がこの大学には与えられていると私は認識をしております。科学技術は先ほど塩﨑学長が引用したオバマ元大統領の言葉にもありましたとおり、経済や社会の進歩に大きく貢献するものでございます。特に私が一国民として、一政治家として心を痛めているのが地球の温暖化の問題でございます。これは人類が今直面している最も大きな危機の一つではないかと思います。是非こうした地球温暖化や、あるいはそれに伴って引き起こされる可能性がある食糧危機といった問題に貢献できるような研究を皆様にしていただきたいと望んでおります。
さらに、現在、AIが私たちの生活の隅々にまで広がっています。このAIと人間が、どう共存していけるのか、そうしたことも研究していただければと思っております。
また、経済の面で申し上げますと、以前、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時期がございました。しかし、現在、情報科学あるいは半導体の分野につきまして、我が国が諸外国に一歩か二歩、劣っていると言うことは、よくご存じのとおりと思います。我が国が強い経済を駆使して国力を高めていくためには、こうした分野での技術力というのが欠かせません。そうした面でも、大きな貢献ができる研究に取り組んでいただければと思っています。
私は、科学者ではございませんので皆さんの研究生活に役に立つような話はできないのですが、以前、本学におられた山中伸弥教授の講演を拝聴する機会がございました。山中教授がアメリカの研究所在籍時に、指導教官から言われた「VW(ブイダブル)」という言葉を紹介してくれました。Vはビジョン、Wはワークハードということでございます。一生懸命に研究をするワークハードが重要ですが、やはりそれにはきちんとしたビジョンがなければならないということを指導教官は山中教授に言われたそうでございます。そのことを山中教授はずっと大切に思いながら研究を進めてきたと言っておられました。先ほど塩﨑学長が言われましたが、経済と社会に貢献するのが科学技術でございます。ですから皆様の研究には必ずビジョン、目的がなければならない。そしてそれは人類に貢献することであると私は思っております。そうした視点をもって本学で有意義な研究生活を送っていただきたいと思っております。
私は奈良県知事でございますので、奈良県と本学との関わりについて少し申し上げさせていただきます。本学は奈良県の宝だと私は思っております。この素晴らしい大学院大学が本県に立地してくださっていることは大変嬉しく、誇らしく思っており、全面的に本学をバックアップして行きたいと常々思っております。私は一年前に奈良県知事になりましたが、奈良県としては特にスタートアップ支援に力を入れて行きたいと思っています。皆様の中にも将来起業しようという意欲をお持ちの方がいるかもしれません。奈良県が主催する様々なスタートアップ関連のイベントがございますので、そうしたものにも積極的にご参加いただければと思います。
甚だ簡単ではございますけれども、本日ご入学された皆様の研究生活が充実したものとなること、また本学の益々の発展を祈念しまして、私のご挨拶とさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。
2024年4月5日
奈良県知事
山下 真